情報処理技術者試験が大きく変わります
IT分野の「国家試験(国が行う資格試験)」が情報処理技術者試験です。1969年に始まった試験なので、コンピュータが一般消費者の手に届く前に導入されたということになります。ITの世界は変化が早いので、この試験もその後さまざまな変更がされてきました。例えば、本校でも重視している「基本情報技術者試験」は、元々は第二種情報処理技術者(認定)試験という名称で、2001年に名前が変わったものです。

試験制度はなぜ変わるのか?
情報処理技術者試験の制度がなぜ変わるのか、一つは情報技術が進歩して技術者に求められる内容が変化すること、もう一つは「情報処理技術者の職種」が変化していくことも理由でしょう。例えば、コンピュータネットワークはコンピュータがある程度普及してから導入されていくものなので、最初はネットワーク技術者という職種は存在せず、後から分業されてきます。ネットワーク技術者の必要性が高まれば、その職種に必要な知識やスキルが整理され、確認する資格も作られる、ということです。
今回はどう変わる?
さて、今回はどのように変わるのでしょうか。2026年2月27日時点では、まだ確定した情報が発表されていませんが、これまでに公開されている情報からまとめると次の方向性で検討されているようです。
- 変更開始時期は2027年度からの予定(さらに2028年度以降に論述型試験を導入の方向?)
- 情報処理技術者を対象とする試験のうち、従来のITSSレベル3とレベル4に対応する試験(応用情報技術者試験と高度試験)が、2レベルを統合する新しい試験「プロフェッショナルデジタルスキル試験(仮称)」になる
- 利活用する人を対象とする試験として、ITSSレベル2相当の「データマネジメント試験(仮称)」が追加される
- ITパスポート試験の試験範囲は、より利活用する人向けに変更される
- 基本情報技術者試験には大きな変更はない(AIやデータサイエンス分野が追加される)
情報処理技術者試験の合格を目指している人にとっては、応用情報技術者試験と高度試験が統合されることは、情報処理技術者試験が開始されてから初めてのことなので驚きもあるかもしれません(開始当初から、一種と特種として分かれていたため)。
詳細は2026年3月末ごろに公表されるとのことです。
今回はなぜ変わるのか?
なぜ今回、このような変更が検討されているかを考えると、「情報処理技術者の職種分担が変わった」からだと言えます。その背景にもAI技術の進歩があります。2025年にエージェント型AI技術が急速に進歩し、情報システム開発の全ての段階を行えるようになっています。それによる生産性の向上を考えれば、これからの情報処理技術者にはAI技術の活用が必須です。そのため、
AI時代の情報処理技術者は、設計から開発・運用までを全て理解し実施する知識とスキルが無ければ、AIを使いこなすことができない
ということ、つまり
AI時代の情報処理技術者はフルスタック型
ということになるからです。
現行の高度試験はプロジェクトマネジメント、ネットワーク、データベースなど、職種分担ごとに試験が分かれているので、これを統合することは時代の流れであると言えるでしょう。
応用情報技術者試験と高度試験を統合するのは、現時点でAI時代のレベル4スキルを定義することが困難だからと言えるかもしれません。ただ、2つのレベルが統合された形になるので、難易度設定がどうなるかは要注目です。
これからIT技術者になりたい人にとっては
今回の情報処理技術者試験の変更をみたとき、これからIT技術者になりたい人はどのような事を意識したらよいでしょうか。
まず「基本情報技術者試験の内容をしっかりと理解し、スキルを習得する」ことです。新しい試験制度でも、基本情報技術者試験が技術系領域の全てをカバーしており、いわば技術者の入門試験的位置付けであることは変わりません。試験を受ける受けないはありますが、現在情報技術者として活動してる人であれば、この内容を理解していることは「当たり前」と認識しているはずです。
また、試験制度全体として明らかに「スキル」が重視されてきています。当たり前のようですが「技術者」ですので実践が出来なければいけませんし、AIを利用する際には「自分に実行するスキルが無ければ、AIへの具体的な指示が出来ない」ことが明らかになったことも理由と考えられます。
なおスキル重視は基本情報技術者試験の内容が変更され、午後試験が科目B試験になったときにも強く打ち出された傾向です。基本情報技術者試験の新しい科目B試験ではプログラミング問題の割合が80%となり、合格ラインが60%ですから「プログラミングが出来ない人は絶対に合格できない」試験になりました。これはプログラミングが「情報処理技術者なら出来て当たり前(実際に業務で使うかは別として)」であり、「そこからスタート」と位置付けられているという意味です。また、現行の応用情報技術者試験ではプログラミングなど技術系・スキルが問われる問題を選ばずに合格することも可能でした。試験制度に関する議論のなかで、この点は問題であると認識されていたようです。そのため新しい試験では、プログラミングだけでなく、データサイエンス、AI、マネジメントなどの領域についても「スキル」を問う傾向が強くなるのではないかと推測しています。
情報処理技術者試験は「スキル」が重視される傾向になっています
スキルは、知識を学んだ後、実践しなければ高まりません。新しい試験は、座学だけで合格することは難しくなるかもしれません。学生であれば実習を通じて、社会人であれば実務を通じて、スキルを高める意識を持つことが試験のためにも重要ですし、実務家として活動するためにも当然重要なことです。そう考えると、試験制度は正しい方向に変わっていくと言えそうです。



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