(教育活動Blog)AIでプログラミングスキルはどうなる? (その4)


前回のBlogで、「AI時代になっても他人のためにソフトウェアを開発するIT専門家になるのであれば、両方の意味でのプログラミングスキルが引き続き重要」と結論しました。

今回はもう少し、プログラミングスキルと、さらに広げてIT専門家そのものに対するAIの影響を考えていきます。

AIによる影響を質と量で考える

まず、質と量の2つの切り口で分けて考えてみましょう。

質の面では、「人間に求められるプログラミングスキルのレベルが高くなる」と考えられます。AIに任せてもかなりの部分は出来ますが、判断を任せている以上、100%求める結果にはなりません。AIが自力で判断出来ない部分がどうしても残ってしまうためです。そうなると人間側には「AIが判断出来なかった、難しいか、判断材料が足りない部分」だけが残り、解決するためにはAIが行った作業を理解した上で考えていくことになります。全部自分でやるよりも難しいと言えるかもしれません。

量の面では、AIを組み込むことで「これまでは出来なかったアプリ」を実現可能になるので、ソフトウェアの量はこれまで以上に増えることが考えられます。そうなると開発だけでなく、作ったソフトウェアの維持も大変になります。AIによって効率が上がっても、それ以上に作業総量が増えるのであれば、専門家の必要量はむしろ増える可能性があります。一方で前述のように求められるプログラミングスキルのレベルが高くなれば、対応できる専門家の人数は増やせないかもしれません。

まとめると、AIの登場によって「必要なスキルレベルが上がり、それによって専門家の人数が制限されてしまうかもしれない」可能性が考えられます。

開発プロセスを考える

ソフトウェアやシステムを開発する方法、開発プロセスへも影響があります。

これまでは、要件を決め、設計した後の開発工程は人間が担ってきました。設計を渡す相手が人間なので、多少あいまいなところがあっても、質問が返ってきたり、過去の経験で補ってもらうことが可能でした。開発をAIが担うようになったとき、同じやり方が通用するでしょうか。AIも、あいまいな点を推測して補い、行動することが可能です。ただ、その判断の傾向が人間とは異なるかもしれませんし、かといって人間と同じように判断させることがAIに適しているとも限りません。そう考えると、開発プロセスを考え直すことも必要になってきます。

ここでの本質的な変化は、「仕様のあいまいさ」の捉え方が変わってくることだと言えるでしょう。従来の開発プロセスは、全工程を人間が担当し、人間があいまいさの解釈を行うことが暗黙かつ当然の前提でした。そこにそのままAIを入れても良いのかという問題です。プログラミングに限らない問題かもしれません。
 

IT専門家の立場を考える

ここでは、IT専門家の立場で考えてみます。

IT専門家にとっての影響は、スキルをお金に換える方法の変化という形で現れると考えられます。どこで(どの業種、どの職種で)、どのように(どの工程で)稼ぐのかが変わるということです。

IT専門家がどこでお金を稼ぐかの面では、ユーザー企業(システムの利用側)で働く専門家がさらに増えていくことになると考えられます。個人や、自社でシステムを使うユーザー企業であれば、AIを使うことで企画から開発、運用までの全工程を自分たちで行うことのハードルがさらに下がり、これまで外に出していた部分を内側でやれるようになるからです。
受託開発型は、人数としては縮小しても残ると考えられますが、残るのはより高度な開発、つまり責任の重い領域や、技術的に難しい領域に特化した形になるでしょう。(業界的には大きな影響が出るところです)

IT専門家がどのようにお金を稼ぐかの面では、コーディング(狭い意味のプログラミング)を行うことで稼ぐ割合は下がることになるでしょう。ただし、それはコーディングスキルが不要ということではなく、「コーディングスキルがあるのは当たり前」であり、「それだけでは稼げない」という段階になるということです。「コーディングスキルを土台として別のスキルを発動する」ことがお金になる、といった感じでしょうか。コーディングを行うとしても、「一般的なコーディングスキルを土台とし、AIが作成したコードを修正するスキルを発動する」ような形になるといえます。

AIのコストを忘れてはいけない

ところで、AIについて現実的に考えるのであれば、忘れてはいけないのがコストです。

AIは、「常識外れにサーバの計算能力を必要とする」サービスです。AIサービス会社は膨大な計算能力を用意する必要があり、多額の設備投資が必要になります。現在のAIサービス費用は利用者獲得のために低く抑えられている面があり、その段階が終わって「投資の回収」段階に入ったとき、費用がどうなるか分かりません。

ある暗号の弱点を発見したというニュースでは、全体で約60時間かかり、AI費用は約10万ドルだったとのことです。達成した成果から考えると「安い」と言えるのですが、この金額は成果ではなく「AIが扱ったデータの量(トークンの処理量)」で決まっています。利用時間ではありません。そうなってくると、ある仕事をAIに任せたときに費用はどれだけかかるかは、AIが自律的に計画して動作していくのですから、やってみなければ分からないということになります。
ビジネスとして考えたとき、このコストの不確実性は大きな懸念点です。AIに出来そうだからといって、すぐに使う判断をするわけにはいかないのです。その判断を行うことも、広い意味でのプログラミングスキルに含まれることになるでしょう。

(まとめ)やはりAIによる影響は大きい

AIによってコーディング作業の一部は自動化されますが、IT専門家には、AIの成果を理解・評価し、あいまいな仕様やコストを含めて判断する、より高度なプログラミングスキルが求められるようになります。AIがコードを書いてくれる時代だからこそ、そのコードを読み、正しさを判断し、必要に応じて直せる基礎力が重要になります。これから学ぶ人にとって、プログラミングは不要になるのではなく、AIとともにより大きな仕事をするための土台になっていくのでしょう。

まとめてみると、やはりAIはプログラミングスキル、そしてIT専門家に大きな影響を与えます。ここまで説明した内容には、ポジティブな要素も、ネガティブな要素もあります。それらの合計がプラスになるかマイナスになるのか、です。ただ、活躍の場は広がりそうですし、AIのコストのことを考えると、完全に置き換えられる(ギュられる)ことも無さそうな気がしてきます。大変なこともありそうですが、良さそうなこと、面白そうなことも増えそうですね。

(追記)ところで、この記事を校正するために、とあるAIに確認させたところ、「ギュられるという言い方は存在せず、読者が誤解する、即刻修正することを提案します」と今まで見たことのない強い調子で言われました。こわかったです。

(追記)別のAIにも確認してもらったところ、やはり「ギュられる」について修正を提案されました。こわいです。


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